世界のベストホテルには、細部まで徹底的にこだわるホテリエの個性が表れたホテルが少なくありません。もし存分に楽しみたいなら・・・
一般的な考えとは反対に、良いホテルをつくるには必ずしも多くの建築家やデザイナー、建設者、コンサルタントが必要というわけではありません。世界中にファンを有するホテルのいくつかは、少数の造り手のこだわりと情熱が詰まっているからこそ、チェックインからチェックアウトまで、訪れた人だけが味わえる特別なホテル体験を約束してくれます。そんな唯一無二の空間が楽しめるセレクションをご紹介しましょう。
Ace Hotel
ワシントン州|シアトル
ここが原点であり未来図。共同創設者であるアレックス・カルダーウッド(Alex Calderwood)、残念ながら彼は逝去してしまいましたが、今日あるすべてのブティックホテルの指針とも言える、エースホテルの探検はここから始まりました。無理のない主張、落ち着きのある志向性、部屋に息づく豊かなもの選びといった想像力に富む一方でなかなか気づきにくいエースの魅力ですが、一度エースホテル体験をしたなら、自身を文化のエンジニアと呼んだアレックスの言葉が間違いではないことに気づくでしょう。
Torre Di Moravola
イタリア|ペルージャ
建築家のクリストファー・チョン(Christopher Chong)とデザイナーの セオネイド・マッケンジー(Seonaid Mackenzie)の鮮明なコンビが手がけた、このホテルの小さな7つの部屋はリノベーション史上最高の手本とされています。1000年もの歴史を誇るウンブリア州の望楼をはじめ、本来の特徴である気候管理や構造の堅実性を、非常にモダンで驚くべきミニマルなホテルへと変身させた手腕は賞賛に値するほどです。
The Rose Hotel
カリフォルニア州|ロサンゼルス
“他のどのホテルとも違う。ありのままが好きなのです”と語るのがファッションフォトグラファーであり、ベニスビーチのボヘミアンな空気が流れる同ホテルのオーナーであるグレン・ルッチフォード(Glen Luchford)とダグ・ブルース(Doug Bruce)の2人。彼らの手により、ヴィンテージのデコと徹底したリノベーションがうまく融合され、生き生きとした雰囲気ながら驚くほど手頃で、太平洋からほど近いスタイリッシュなホテルとして生まれ変わったのです。
Atrio Restaurante Hotel
スペイン|カセレス
アトリオ・リストランテ・ホテルはユアン・アントニア・ペレス(Juan Antonio Pérez)とホセ・ポロ(José Polo)の素晴らしい料理の腕前を尊重したつくりになっています。壮大なレストランの周りにホテルが建てられていますが、決してあとから考えられたものではなく、精励で入念、心に残る提案をする彼ららしい、自然な結果と言えます。同ホテルの魅力は美味しいワインと手の込んだ食事を楽しみながら語り継がれるべき、価値あるストーリーではないでしょうか。
The Roxbury
ニューヨーク州|キャッツキル
ロックスベリー劇場と呼ばれる同ホテルですが、それは決して誇張ではありません。グレゴリー・ヘンダーソン(Gregory Henderson)とジョセフ・マッサ(Joseph Massa)の2人が創り出した演出はとにかく素晴らしいと評価されています。これほどまでにカラフルなホテルは地球上のどこにもないでしょう-特にニューヨーク市の近くには。そして、型にはまらないコンセプチュアルでユニークな演出は、ホテルに帰ってくるたびに新しい部屋の予約をしてしまうほど魅力的です。
Las Alamandas
メキシコ|クエマロ
ボリビアでブリキ産業の有力者であったドン・アンテノール・パティーノ(Don Antenor Patino)がコスタレグレ・ビーチでの大規模なリゾート設立の夢を持ちながら、実現する前に亡くなったという映画のようなストーリーが始まり。その後、冒険心のある孫、イザベル・ゴールドスミス(Enter Isabel Goldsmith)がドンの独創的な考えを見直し、1,500エーカーという広大で、手つかずのままのビーチフロントに、ハイパーエクスクルーシブで、環境に負担の少ないリゾートを完成させました。ドンにはあまり大きな声では言えないほどの変貌ぶりですが。
Kimber Modern
テキサス州|オースティン
オーナーの一人である、キンバー・キャヴェンディッシュ(Kimber Cavendish)、彼にしかできない見事な指揮が光る同ホテル。現在のオースティンにある的外れで風変わりな騒音にもかき消されないサウンドシップのような建築が本当に素晴らしいのです。単にキンバーの巨大な芸術作品を置いたようにも見えますが、(植物の生成や曲線要素といった)物理的観点からも、(地元のアーティストや職人の作品がいたるところに飾られているという)比喩的観点からも、当初からランドスケープと調和するようにデザインされ、建てられたことがわかるでしょう。それは多大なる情熱と個性を自由に表現できる力が合わさったからこそなせる技です。
Hotel Primero Primera
スペイン|バルセロナ
バルセロナの邸宅街であるトレス・トーレス地区の隠れ家として改装された同ホテル。1955年以来、オーナー一家が住み込みで管理し、現在も1階には一家が住んでいます。コージーなレザーのイスに座って本を読みふけったり、本格的な「オネスト・バー(Bar Honesto)」で思わず話に花を咲かせてしまうほど、インテリアにはタイムレスな心地よさが息づいています。近隣にある(ランブラス通り(Las Ramblas)の大多数のホテルと比べれば、歓迎以上のもてなしで迎えてくれ、アーリーチェックインなんてお手のものです。
The Farm
インド|ジャイプール
この農場では一体何が育つのでしょう? 一言で言えば、遊び心溢れる再利用の精神によって育まれた、非常にカラフルで芸術的なインスピレーションです。SuryaとRitu Singhオーナー夫妻は前衛的な驚きのある演出をとり入れ、いかなるゲスト、特にヴィジュアルに敏感なゲストが楽しめるよう大刷新した雰囲気の中で迎えてくれます。その姿勢は、“リフレッシュ”という言葉では足りないほどで、形や素材、目的を絶え間なく実験する熱狂的な科学者ように振り切れています。実行と再建あるのみなのです。
Temple Tree at Bonton
マレーシア|ランカウイ島
ランカウイ島のビーチ近く、緑あふれる絶好のロケーションにあった典型的なリゾートを一新。中国、マレーシア、コロニアルといったバリエーション豊かな様式のヴィラを備えて拡張した同ホテルのユニークさは、それぞれのヴィラを元の場所から移築して、テンプル ツリーとして見事に再建したことにあります。本格的な建築であることはもちろん、いろいろなサイズを揃え、コンテンポラリーなインテリアデザインでまとめられているのも特徴的。強烈に個性的なステイを望むなら、ここは抜群の選択と言えるでしょう。